アンダー・ザ・シャドウ

映画 comments(0) - こぶたのゆう

 

2016年に製作されたヨルダンとカタールとイギリスの合作ホラー『زیر سایه』です。映画はペルシア語で製作されています。監督はこれがデビュー作となるBabak Anvari。1980年代の戦時下のテヘランを舞台にしたお話です。第89回のアカデミー賞に最優秀外国語映画部門にイギリスからのエントリーとして選ばれました。アテネ国際映画祭で最優秀脚本賞、プチョン国際ファンタスティック映画祭で最優秀作品賞、ファンシネマラガで最優秀作品賞と最優秀女優賞、ファンタスポアで最優秀女優賞、ヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭で最優秀作品賞、シッチェス国際ファンタスティック映画祭でニュービジョン部門で最優秀作品賞など多くの賞を受賞しています。2016年のサンダンス映画祭でプレミア上映されたのち、ストリーミング・サービスのNetflixによってその権利が買われました。

 

1980年代のテヘラン。今この町はイランとイラク間での戦争の真っ只中です。テヘランに住んでいるシデーは大学に通って医者になろうと頑張っていましたが、若い頃に学生運動をしていた事から国から医師の資格がもらえないだけでなく、大学をも辞めなければならなくなりました。この国には女性の自由はなく、体はチャドルで隠さなければ怒られ、家で大人しく主婦や母親でいなければならないのです。そんな状況で夫婦の関係も悪化していきました。その夫に召集令状が届きます。娘のドルサと戦時下の町で暮していきますが、そんなときアパートの上の階にミサイルが落ちました。幸い爆発はしませんでしたが、不発弾として残り、その部屋の住人は死亡しました。頻繁に攻撃の警報がなり、住人は地下室に避難する。そんな不安な日々を暮らす中、ドルサが家の中にジンが来て悪いことをしようとしていると言い始めます。

 

ジンというのはアラビアンナイトに出てくるランプの精霊で有名ですが、人間と同じようにどうやらこのジンにも良いジンと悪いジンがあるようです。悪いジンに取り憑かれると狂人になってしまったり、人の命を奪うものもいます。力の強いものからマリード、イフリート、シャイターン、ジン、ジャーンと格付けがあります。アラブ人特有の霊なので日本人のわたしには馴染みがありませんが、何かの悪霊かなあという視点で見ていても特に問題はありませんでした。基本的に物語はシデーとドルサの母娘の2人だけで進みます。最初はドルサが、そして次第にシデーが家の中に何かがいる、という感覚に襲われます。実際に物が動いたり、見ていたものが違ったりと、スプラッター的なものは全くありませんが、怪異を見せるという怖さが多く出てきます。ポルターガイストとか何かの悪霊てきなものです。それによってお母さんが徐々に精神的に追い詰められていき、それに娘が不信感を抱き始めるという状況に陥っていきます。最終的に悪霊の正体は分りませんし(ジンということになってますが)、アメリカ映画によくあるこうやって退治した、という展開でもありません。2人がそれぞれ怪異を目撃している(ような)ので、何かがいるんだろうなとは思うんですが、シデーだけを見ると、彼女の置かれている状況下で次第に精神が参ってしまっているようにも感じます。この真実が分らないまま、微妙な描き方で観る人にそれぞれの考え方を持たせるという演出はとても良かったと思います。

 

監督はBabak Anvari、出演はShidehにNarges Rashidi、DorsaにAvin Manshadi、IrajにBobby Naderi、Mr. EbrahimiにRay Haratianです。

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