クリーピー 偽りの隣人

映画 comments(0) - こぶたのゆう

 

2016年6月18日〜19日付 日本興行成績第6位 1億2728万円。

 

前川裕の第15回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した小説「クリーピー」を原作とした映画『クリーピー 偽りの隣人』です。応募総数157編の中から川中大樹の「サンパギータ」とともに受賞しました。監督は黒沢清。映画と原作はかなり内容が違うようですが、わたしは原作を読んでいません。

 

犯罪心理学に長けた刑事・高倉はサイコパスの犯人との会話で相手を理していたつもりだったのですが、それが間違いで自身刺されてしまい、被害者まで出るという事件が起こり、それをきっかけに刑事を辞めました。1年後、彼は大学で犯罪心理学を教える仕事をしています。新しい家に引っ越してきて、新しい環境で妻の康子とともに心機一転を図っていました。隣へ挨拶に行きましたが、みんな少し変わっている人たちです。ある時、大学の同僚が整理していた都内の事件のデータベースの中に6年前に起こった未解決の事件があり、その同僚の大川に現場の家に行ってみないかと誘われます。それは当時中学3年生の娘以外の家族、両親と兄が行方不明になってしまったというものでした。現場の家を見た瞬間、彼は事件の匂いというものを感じました。一方、最初に尋ねた時に留守だったすぐ隣の西野家に挨拶に行った康子はそこで隣人の西野と会いました。しかしこの人物はかなりの変わり者らしく、会話もなんだかかみ合いません。嫌な気持ちになって家に帰ってきます。帰宅途中の高倉も西野から話しかけられ、康子がうちの事情を根掘り葉掘り聞かれて困ってしまったという苦情を言われてしまいました。高倉は康子に隣とは関わらない方がいいと忠告します。大学に警察時代の同僚・野上が現れました。例の6年前の日野市の失踪事件の現場に行った事が警察に知れていました。野上はこの事件に興味を持っていて、たった1人の生存者に会ってみないかと高倉を誘います。2人はその女性・早紀とコンタクトを取ります。早紀は最近になって幾つか思い出した事があるといいます。それは自分が修学旅行に行く(行っている間に行方不明になりました)前の日に、家族3人が集まって「いなくなるのでちょうどいい」と話し合っているところでした。そして3人が誰かと会ったり話しているようだという事も。

 

原作は読んでいなくてあらすじだけ見ましたが、映画とは基本的な設定は同じものの、展開だとかストーリーが大きく違うものだなと思いました。一家失踪事件、西野昭雄という男の恐ろしさ、マインドコントロール(洗脳)、そして西野の娘だと思っていた澪が「あの人はお父さんなんかじゃない」という展開は大体同じものの、「お父さんじゃない」という発言以降の展開が全く違うようです。ですので映画版のみの評価となりますが、わたしはこの映画はかなり(不気味とか怖いとか含めて)面白いと思いました。わたしの感覚だと黒沢清という人の映画のでき(わたし好みに合うかどうかという基準です)は大きく差があるように思っています。「CURE」や「降霊」のような大傑作だと思うものもあれば、「カリスマ」のようになんだかよくわからないようなものもあります。この映画は大傑作とはいかないものの、「回路」レベルの面白さはあるように思いました。「回路」も良い部分と悪い部分が混在していましたし。映画を見ている最中から思っていましたが、この物語のモデルとなっているのは2002年に発覚した「北九州監禁殺人事件」かな。2012年に発覚した「尼崎事件」も類似ですが、わたしはこの事件よく知りません。ただ「北九州監禁殺人事件」は別の機会の時に調べた事があって、すごく怖い事件だと思っていました。この事件は人の弱みを利用して監禁し、拷問などによってマインドコントロールした被害者同士を相互不信にさせて殺人まで起こさせたものです。7人もの人が死んでいて、状況に応じて被害者が加害者になったりもしました。この事件の特に怖いところは、親兄弟親類間で殺させていて、農協系の副理事を務めていた名家や元警察官までが犠牲者(殺しまでやっている場合も)です。かなりの部分がこの事件と同じようになっていて、見ている間、ずっとこの事件が頭の中にありました。ただ良くあるように映画は誇張と言われますが、この事件に関しては映画の方がずっとマイルドにしてあります。映画ではマインドコントロール下に置くために薬を使用していましたが、実際の事件では薬は使われていません。通電という肉体に電気を通すやり方で、性器の部分にだとか人間の尊厳を失わせる方法が行われました。一家6人を支配下に置くとか、小学生の女の子に保育園児の弟を殺させたり(その前に死んだお母さんに会わせてあげるという理由で)とか、本当に地獄があったようです。事件発覚後、報道規制も行われました。映画ではこのような人間とは思われない非道までははっきりとは描かれません。その意味では物語的にはどうして被害者たちは逃げないんだろうという部分がクローズアップされがちになってしまいます。ただ演技や演出についてはすごく良かったと思います。陰のある西島秀俊の演技や、怪演と言われる香川照之の演技、竹内結子の次第に影響されていく怖さなど、すごくリアルに感じました。内容的にあまり詳しく描けないテーマ(特に今の日本では)だと思うので、ここが精一杯のところなのかもと思ったりもします。

 

監督は黒沢清、出演は高倉幸一に西島秀俊、高倉康子に竹内結子、本多早紀に川口春奈、西野雅之に香川照之、西野澪に藤野涼子です。

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