ドグラ・マグラ

映画 comments(1) - こぶたのゆう

 

1988年10月15日に公開された、監督・松本俊夫、出演・桂枝雀、室田日出男、松田洋治による『ドグラ・マグラ』です。この映画、ジャンルとしてはミステリーというかSFというかとにかくジャンル分けに困りますが、原作は幻魔怪奇探偵小説となっていました。元は昭和10年に松柏館書店から刊行された同名小説。小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」と中井英夫「虚無への供物」と並んで日本探偵小説の三大奇書とされています。原作からして問題作のため映画化も難しいのですんが、出演者の演技に対してはかなり好評です。物語の方は原作を完全に映画化している訳ではないので賛否両論です。

 

主人公が時計のなる音で目が覚めると、とある一室の床の上に横になっている自分を発見しました。そしてここはどこなのか、そして自分が誰なのかを思い出せなくなっていたのです。主人公が目覚めた事により、背の高い男が部屋に入ってきました。男は九州帝国大学法医学教授の若林だと名乗ります。そして主人公はとある事件に巻き込まれて一時的に記憶喪失になっており、その記憶を取り戻す事ができれば幸せな生活が待っているといいます。今、主人公がいる場所は九州帝都大学の精神科病棟。彼の担当の正木博士が1ヶ月前に亡くなって、若林博士が仮の主人公の担当になっていました。若林博士は主人公の記憶を取り戻すために、彼に関係のある品々を次々見せていきます。こうして徐々に分ったことは、主人公が関係した事件とは、呉一郎による母親及び許婚の殺害事件でした。若林博士の口ぶりからは呉一郎という人物は何者かの手によって心理遺伝による発狂を促され殺害に及んだようなのでした。しかし殺されたはずの許婚・呉モヨコが隣の病室にいたり、さらには一ヶ月前に死んだと言われていた正木博士が目の前に登場し、黒幕は若林博士だといい始めたのです。

 

とにかく第一印象は怪奇。気がついてみると自分は記憶喪失。古い時代の精神病院の中で異様な雰囲気です。しかも登場する事件がご先祖様の変態心理が遺伝して子孫にそれが発現するという、すごい内容。そのためには発現させるためのきっかけがいるんですが、重要人物の呉一郎のご先祖様・呉青秀(唐の時代の人です)が皇帝を戒めるために自分の妻を殺してその死体が腐乱していく様子を巻物に記したという事件が登場します。この時腐乱のスピードに筆がついていかず、間に合わなくなった呉青秀は他の娘を殺して代用します。この頃には既に頭がおかしくなっていました。この遺伝子を受け継ぐという内容を説明するために、脳髄論だとか胎児の夢だとか正木博士の論文をいろんな形で見せていきます。映画版は小説とは違ってかなりすっきりと多くの部分をカットして分り易くしてありますが、確かに頭がこんがらがるような混乱というのが少ないので説明不足の感じがします。原作の方は主人公が若林博士についていって記憶を取り戻そうとする話に、正木博士の各種の論文、アホダラ教の文句、新聞記事や取調べ調書などいろんな資料が登場して、さらに患者の1人が書き上げたという小説のようなもの「ドグラ・マグラ」と実際の小説が同じ構造を持つという頭の混乱するものでした。この辺は竹本健治の「ウロボロスの偽書」に似てるかも。そして小説の一番最後に出てくるおそらく真相(これもそうじゃないとも取れるかなり難解なものですが)は映画版ではほとんど分りません。それでも小説の持っている雰囲気を結構忠実に再現しているように思います。映像でここまで再現というのはそれだけで評価できる事です。これ以降映画版が作られていない事からも、探偵小説史上(映画史の中でも)とても貴重な作品だと思います。

 

監督は松本俊夫、出演は呉 一郎に松田洋治、正木 敬之に桂枝雀、若林 鏡太郎に室田日出男、呉 八代子に江波杏子、呉 モヨ子に三沢恵里です。

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