怪談実話 こめかみ草紙 串刺し 平山夢明

小説 comments(0) - こぶたのゆう

 

それは、霊をも超える恐怖。
すべての恐怖は顳顬の間にー 得体の知れない怪異が、あなたのハラワタをえぐる。怪談実話の新たなる金字塔!

実家の古い机、その抽斗の裏に書かれた予言。妊娠していないのに膨らんだ腹から出てきたもの。病院の壁に立てかけられた梯子。自傷した傷口から聞こえてくる声。八百屋の店先につながれた、顔の皮を半分失った猿。書き込みだらけの古本の、最後のページー。

霊ではない、だが強烈な怪異が日常の風景から突如あふれ出る。
怪異専門誌『幽』連載に、書き下ろしを追加収録!

この本は、怪談実話と銘打ってますが、その内容は色々な人から聞いて集めてきました、という体裁で始まります。ひとつの話はごく短いもので、長いものでも10ページ前後、短いものになるとわずか3行というものまで、たくさんの話が収録されています。収録タイトルは次のようになっています。

雛と引出 泥酔 霧嫌い 蜃気楼 ノックの子 蛍火 傷口 壁 変化 ガスパン 忌み数 ハカナメ 口不浄 二十八年目の回帰 怖いから……。 孕み 四日間 麻酔二題 怖かったんだよ 忌梯子 予言猿 李 串刺し 詛 思い出 手袋 燐光 傘 叫び 傷 携帯 尻餅 パグ 実験 ストーカー 形見 正気玉 厭な本 憑が出る はっきりそれといった風でもなく…… 蠟石 土手女 て 口真似 チャギリ 隣の家 つらい記憶 電話 つぐみ 夜の蝉 おふれ布袋 禁日 イタ電 猫の木 夜の声 自転車 空箱 せせらぎ 指ぬき

原則として実話というところから、内容的に評価のしにくいものではありますが、わたしの好みというか怖かった基準でみると、次のお話がよかったと思いました。

「怖いから……。」
住んでいるマンションで自殺があり、たくさんの人だかりと救急車が集まっていました。夜遅くにコンビニに向かおうと外に出たときは、すでに騒ぎは収まっていて、辺りは普通の様子になっています。コンビニから帰ってくると、エレベーターできれいな女の人と知り合いました。なんと今日の自殺騒ぎの部屋は彼女の隣だというのです。女の人はすごく怖がっていて、今晩部屋に泊めてもらえないだろうかと言うのですが…
「叫び」
大学2年生の時に引っ越したアパートの隣部屋は、空部屋なのに深夜とてもうるさいのです。壁をドンと叩かれるだけならまだいいものの、とてつもない悲鳴が聞こえたりもします。あまりにもうるさいので隣に訪ねて行ったこともありますが、当然誰も出ていません。不動産屋に連絡すると、そんな時間に訪ねに行く人はいませんと言われ、さらにその部屋は事故物件だという事を知らされました。3年前にフィリピンの女の子が同棲相手に殺されたのです。ある時飲み会の席で彼は、この部屋の音のことについて話してしまいます。するとみんなから、その音を録音してほしいとラジカセを渡される事になってしまいます。
「実験」
中学にあがったばかりの頃、彼はある実験をしました。それは墓石の周りに墨を入れたバケツを並べて霊拓(魚拓の幽霊版)を取ろうというのです。彼は幽霊には足がある、という持論からこの実験を思いつき、お寺の住職に協力してもらう事になりました。お寺の中にある一番いわくつきと思われるお墓を住職に選んでもらい、実験を開始しました。当然中々足跡は現れなかったのですが、ある日敷石に黒々とした跡がついているのを発見します。
「隣の家」
一人暮らしをしていた彼女は、両親が事故で亡くなってしまったのを機に実家に帰ってきます。隣は何度か住んでいる人が代わっていて、今は小学生の子供が1人の3人家族が住んでいます。去年の夏、その隣で一家心中が発生し、それ以降その家には買い手もつかなくなって荒れ放題となってしまいました。問題はある日、何の兆候もなく発生しました。いつものようにお風呂に入って着替え、ベッドに入って寝たのですが、深夜違和感でふと目が覚めると、なんと寝室ではなく隣の家の庭の中に突っ立っていたのです。事態はさらに悪化していき、別の日には眠っていてふと目が覚めると、今度は隣の家の玄関に立っていたのです。鍵がかけてあって中には入れないはずなのに、なぜ自分が隣の家の中に入れているのかもわかりません。

実話(だという前提でのお話です)なので、面白いかどうかという判断は難しいのですが、そもそもこの本に採用されているお話の趣旨が怖い話、ではなくて謎だったり、奇妙だったりといったお話を集めるというものです。ですのでそういう意味では、例えば「孕み」のお話に出てくる膨れたお腹の中から出てきたものは特に不思議ですし、「元気玉」というものも謎に包まれています。現代の科学では説明されていないものです。そういった、単に霊が絡む不思議な出来事だけではなくて、物質自体が謎に包まれている(その正体が科学的にもわからない)ものも登場するところが興味深かったです。ひとつひとつのお話が短いので、手軽に読めるのもいいです。一番短い、わずか3行のお話、一見不思議だねというようなお話ですが、ジワジワと怖さが湧き上がってくるうすら寒さがありました。

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